「朝倉さんはどうしてボブズに?」
彼の自然な問いかけから、私たちは会話を取り戻した。
「元々大学生のときにアルバイトをしてたんです。当時の店長にこのまま就職しないかって勧められて、それで」
やりたいことも見つからずにいた私は、四年間続けたボブズでの仕事だけが強みだった。ボブズで働くのは好きだったし、オープニングスタッフとして始めた店舗でバイトリーダーにまでなって、ここで働くのもいいかもしれないと安易に決めてしまった。
語っていて、なんの面白味もない話になんだか恥ずかしくなる。
「すみません、大した理由なくて」
「そんなことない。ずっとひとつのことを続けるって、それだけでもすごいことだと思うし」
いつの間にか彼から敬語が抜けていた。会話が砕けていき、だんだんと距離が縮まっていくのを感じた。
「高科さんはどうしてパイロットに?」
私も同じ質問を返した。
「昔から夢だったんですか?」
ここぞとばかりに聞いたのは、今なら彼のことを知れるかもしれないと思ったからだ。
「夢なんて大それたものではなかったけど、空は好きだったかな」
「……空?」
「うん。高校のときとか、好きな雲の話ばっかりしてた」
そのとき、全身の血が引いていく感覚がした。