「おねーさん、ひとり?」
「いい店知ってるんだけど一緒に行きません?」
近づいてくるふたりに眉をひそめる。一瞬で面倒だと察知し店に戻ろうと立ち上がったら、バランスを崩してひとりの男に「おっと」と支えられた。
べたべたと二の腕に触れる手の感触。知らない男の身体がぴったりとくっつき、不快だった。
今すぐ離れたいのに、酔った自分の体と闘うので精一杯で突き放す気力はもう残っていなかった。
ぐいっ――。
そのとき、誰かに腕を取られて引き寄せられた。暖かい胸元に頬が当たり、抱きしめるようにして背中へ回った腕に包まれている。
ふんわりと柔軟剤の香りがした。
「すみません。彼女、僕の友人なので」
耳元で低い声がする。
視線だけ上に向けたら、間近に高科さんの横顔があった。
すっぽりと収まった胸の中で、肩をすぼめて小さくなる。折りたたまれた腕がぎこちなく固まったまま、加速する心臓の鼓動を感じていた。
ぶつくさと言葉を吐き捨てる男たちの声が遠のいていく。同時にくっついていた体がゆっくりと離れていった。
「大丈夫でしたか?」
顔を覗きこまれ、咄嗟に逃げるように顔をそむけた。
「はい、ありがとうございます」
掴まれた腕がまだ熱を持っている。俯いたまま、紅潮した顔を隠すように乱れた髪を整えた。
「高科さんも、風にあたりに?」
極力、当たり障りのない質問を発した。