二週間後。あれから何回かメッセージのやり取りをしたものの、踏み込んだ話は一切できていないまま異業種交流会当日を迎えた。


「うわあ、緊張する」
「なんで未奈子が緊張するのよ」
「だってパイロットと出会える場なんて早々ないじゃない」
「ちょっと、目的忘れないでよ」


 高科さんお勧めのイタリアンは、私たちの会社からほど近くにあった。

 飲食店が立ち並ぶ通りの一角にあるお洒落な店構え。

 到着するなり、店の前で嬉しそうにはしゃぐ未奈子の服装は、いつにも増して気合いが入っていた。普段はパンツスタイルの彼女が珍しく上品なロングスカートをはいていて、とても新鮮だ。

 ひとりだけ「イケメンくるかな」なんて言って、完全に合コン気分。私のために〝異業種交流会〟なんて咄嗟のアイデアを出してくれたんだとばかり思っていたけれど、今思えば自分がパイロットと出会いたかっただけなのかもしれないとすら思えてきた。


「ていうか、本当なんで加賀美が来たの」


 うきうきと楽しそうにしていた表情がスンと消えた。

 後ろを振り返るなり、加賀美くんを不満げに見上げる。未奈子は当たり前のように女性社員の誰かを誘おうとしていたのに、なぜだか『俺が行く』と言って聞かなかった。