千佳ちゃんが姉の親友だったことを思い出した。何度も家に遊びに来ていて僕も懐いていたような気がする。チカさんは僕の2つ程度年上だと思っていたら5つも上なことには驚いた。

「七絃くん、あたしのことも思い出してくれたんだね」

歩き出してすぐに千佳ちゃんが口を開いた。

「うん、少しは。千佳ちゃん、前はボブだったよね」

記憶を探りながらそう返した。僕の記憶の中で千佳ちゃんは、背が低めなボブカットの大人っぽい女の子だったから。姉とは正反対な。

「あー、短い方が好きなんだよね。でも紫絃になりたくて」

気まづそうに語る千佳ちゃん。そっか、お姉ちゃんみたいになろうと髪を伸ばしてたのか。

「千佳ちゃんは千佳ちゃんだよ」

僕はずっと思っていたことを告げた。たしかにチカさんは姉にそっくりだったけれど、違う人だ。紫絃は僕の姉。でも、千佳ちゃんは僕にとっては──。

「お姉ちゃん、代わりになっちゃだめかな」

千佳ちゃん恐る恐る、という感じで言った。僕は驚いてすぐさま反対する。

「なんで!千佳ちゃんがお姉ちゃんになったら、僕」

そこまで口にして、言葉を詰まらせた。この言い方じゃまるで千佳ちゃんより姉の方がいいと言っているようなものだ。嫌よねっと悲しそうに俯く千佳ちゃんに僕は口を開く。

「姉じゃなくて、彼女になって欲しい、かな」

僕の言葉に千佳ちゃんは、目を見開いて固まってしまった。でもすぐに頬を緩め、いたずらっ子のような笑顔で言う。

「高校卒業するまで待っててあげる」

千佳ちゃんのその言葉で僕らは解散した。…また明日。