その後もしばらくチカさんと二人で話していた。チカさんは僕のことを沢山聞いてくる。それに答えてばかりで僕はチカさんのことを、何も聞けていないと思い僕も質問をする。

「チカさんは、何歳?仕事とか学校って…」

たどたどしくいつもより少し大きい声で言った。いきなり踏み込みすぎたか、と口にしたあと後悔する。そんな僕に少し驚きはしたが、優しい笑顔で答えてくれる。

「バイトはしてるよ、そこらへんで」

バイト…ということはフリーターとかかな。そこらへん、か。チカさんは秘密だらけなように思える。昨日より明るい女の子には見えるが、ミステリアスなところは変わっていないみたいだ。

「チカさんよくミステリアスって言われない?」

気づいたらそう口にしていた。自然と頬が少し緩む。僕にとっては本当に久しぶりの笑顔だった。

「言われない言われない。てかナツくんやっと笑ったね」

チカさんが胸の前で手を横に動かし否定する。僕の笑顔を見逃さずに突っ込んでくる。でも不思議と嫌な感じはしなかった。

「うん、久しぶりに笑った」

もう一度不器用な笑顔で僕は言った。チカさんと話していると自然に笑顔になれる。昨日初めて会ったばかりなのに不思議だ。

「そーいえばナツくんはなんで学校行ってないの?」

先程までの笑顔を消し、唐突にチカさんに聞かれた。僕はドキッとした。そりゃあ平日の昼間にこんな所にいる中学生、不思議に思うよな。