こんなに毎日が退屈でくだらなく感じてしまうのは、多分それが思春期っていうやつで。
シングルマザーで大変なはずなのに、愛情をかけてもらって育ててもらって、こんなに反抗してしまうのもやっぱり. . . 。
そうやって逃げてしまう自分の幼さに嫌気がさしてくる。
「ひな!大学進学するの?」
ホームルームが終わるのに気づかないほど、ぼーっと教室の窓から夕暮れを見ていたら、親友のみきが話しかけてきた。
「進学しないよ。だって勉強だるいじゃん。早く実家を出て親と離れたいし〜。」
(早く家を出て、親と一緒に暮らしたくないな。)
「そーなんだ。小学生の時、小学校の先生になりたいって言ってたのにね。」
私の本心を察するようにそっと言ってくる。
「うるさいな〜。いつの話をしてるの。 それよりも、昨日の歌番組見た?」
「 "Breeze" が出てたやつでしょ。もちろん見たよ。ほんと、カズくん1番可愛かったな〜。」
「Breezeは本当にかっこいいよね!でも、事務所から干されてるよね、最近。」
「確かに!後輩グループの方が出番多かったもん!」
「最近、本当に干されててかわいそうなんだけど。」
「そうよ!運営ちゃんとしろよって話じゃん!」
ねぇっと顔を見合わせていると、担任の村井が雑にドアを開けてズカズカと入ってくる。
「お前らいつまで話し合ってんだ!はよ帰れ!」
はーいとダルそうに返事をして教室を出た。
「みきだけに言うんだけどさ、実は日記つけてるの。」
「もしかしてだけど、涼太くんの影響?」
「うん!でも、可愛いものじゃなくて、家に置いていた古いノートにだけどね。」
「いいじゃん!私もカズくんの影響でゲーム最近してるしね。」
(最近じゃなくて、推す前からだろ!)
「そーなんだ。じゃあ、また明日ね!」
バイバイと手を振り別れた。
ただいまと誰もいない部屋に言って、日記をつけるために勉強机に座る。
三日坊主の私が1ヶ月も継続できたって推しの力恐るべしと思いつつ、パラパラと見返してみる。
(なんか、平凡過ぎて面白くないな。あ、そうだ!妄想で今日の一日を書いてみよう!)
(こんなことなんてありえないけど、結構面白い内容になったな。私が. . . だなんて。)
「 ただいま!今日は特別にセールでひなの好きなステーキ買ってきたよ。」
そんな妄想を打ち破るように仕事帰りの母親が帰ってきた。
「私、ダイエット中だからいらない。部屋で寝るから入ってこないで。」
強くドアをバンと閉じて、ベッドで目をつぶった。
いつもの憂鬱なアラームで目を覚まし、昨日そっけなくしてしまった母親と顔を合わせるのは気まずいなと思いつつリビングへ向かった。
「おはよう。ひな。」
「おはよー。まだその格好なのかよ。早くいつもの格好に着替えろよ。リーダーがフリーズしてるだろ。」
「まあまあ、ゆっくりいこうよ。コーヒー飲む?」
「新聞どこだ?今日、ニュース番組あるから晩御飯いらないわ。昨日言い忘れてた、ごめんなー。」
そこにはテレビの中でしかみたことのない推したちが優雅に食卓を囲んでいた。