「ふぅ、ちょっと休憩」

 汗でべとつくゴム手袋を取り、手と顔を洗って持ってきた水筒の麦茶を飲んだ。本当なら甘い物でも欲しいが、掃除が完遂しないうちに本気で休息を取る訳にもいかない。まだ奥の寝所が残っているのだ。

 祖父の葬式の後でさえ、祖母が触らせなかった寝所である。何が埋もれているか見当も付かないが、母の話ではゴミにしかならないような、着古した服が眠っているんじゃないかということだった。

 日に焼けた畳に恐る恐る足を乗せ、染みの付いた押入の戸を開ける。古い布団や毛布の他には、シミーズやタイツが堆く積まれている。中には新品同様の物もあったが、まさか母も欲しいとは言わないだろう。

 寝具は紐で縛って玄関口に運び、残っていた衣類も粗方整理した。ようやく終わりが見えてきたが、まだ最難関の天袋が残っていた。背が低いので、あまりやりたくないのだが、あそこをやらねば終われない。私は台所から食卓椅子を持ってきて、押入によじ登った。

 薄暗く埃っぽい戸棚の中には、あってもなくても良いような物ばかりが詰め込まれていた。古い健康器具や旅行用トランク、あちこち痛んだ籐製の収納ボックス……。

 一体いつから置かれていたのだろう。私はげんなりしながら、重いだけのガラクタを少しずつ下ろし始めた。

「これで、終わりっ!」

 名前どころか用途さえ分からない、足形の付いた丸い台とポールのセットを下ろしたところで、私は勢いよく言った。掃除を開始してから五時間弱、疲れが溜まっているせいもあるだろうが、天袋の清掃が一番骨身に沁みた。タオルで汗を拭いていると、天袋の奥、左の角に平べったい段ボール箱が見える。

 あれは、何?

 私は腕を伸ばし、どうにか箱を引っ張り出した。電灯の下白い埃がぶわっと舞ったけれど、なんとなくお宝が見つかったような気がして、少し浮き浮きしながら箱を開ける。