気づかれないように、気を付けていたつもりだったのに――。

私はうつむいた。

「俺が見逃すと思った?言ってみな」

「それは……」

私はためらった。この交際の先にあるものは何なのか。宗輔が私との結婚を考えているのか否か。――それらはきっと、私が先走っているだけの疑問と不安に過ぎない。そして、それを口にした時の宗輔の反応が怖い。

「前にも言っただろ。言いたいことを飲み込まなくていいんだぞ」

宗輔が私の頭を優しく撫でた。

付き合い出してから、こんな風に撫でられたことは初めてだった。嬉しいと驚きが入り混じった顔で、私は彼を見上げた。

「なんだよ、その顔は。佳奈にはこっちの方がよかった?」

宗輔は意地悪そうな目をして私を引き寄せ、深くキスをした。

おかげで私は全身から力が抜けたようになってしまった。

ぐったりとした私から離れると、宗輔はくすっと笑う。

「降参か?」

私は彼の胸に上半身を預けると、意を決して、ため息とともに口を開いた。

「あのね……」

私はおずおずと切り出した。

「宗輔さんとのこれからのことを、考えてしまったの。私はずっと一緒にいたいと思っているけど、宗輔さんはどうなのかな、って。あの、これは私の気持ちであって、宗輔さんにも同じように思ってほしいとかじゃないから。できれば重く捉えないでほしい――」

私がそう言い終えた途端、私を抱く宗輔の腕に力が入った。

「それって、意識してくれていると思っていいのか。……俺との結婚」

低い声で言う宗輔に私は慌てる。

「あ、あの、ほんとにね、ちょっと想像してみただけだから……」

宗輔は私の顔を覗き込んだ。

「佳奈は、俺が君と遊びで付き合っていると思ってるのか?」

「そんなこと思っていないわ。だけど……」