ところが、電話の向こうからは、拗ねたような声が聞こえてきた。

―― 会いたいと思っているのは、俺だけなのか。

そんな風に言われて嬉しくないはずがない。電話越しの甘い言葉に酔いそうになりながら、私は携帯をきゅっと握りしめて言った。

「そんなことないの、分かってるくせに。会いたいと思ってるに決まってるでしょ」

―― だったら……。明後日、うちに来ないか?

「明後日?特に予定はないけど……」

―― 映画を見に行こう。その後二人で買い物してさ、一緒に夕飯作って食べないか。何を見たいか、何を食べたいか、考えておいて。アパートには二時頃迎えに行くから待っていて。……返事は?

言っていることは普通の内容のはずだ。それなのに彼の言葉はどことなく早口で、その声はいつもよりも固く聞こえる。

はじめのうちはどうしたのかと訝しく思っていたが、私は彼が言う「約束」をじわじわと思い出した。にわかにどきどきと鼓動が打ち出して、それにつられるように声が震える。

「……分かった。待ってるわ」

―― 明後日、楽しみにしている。納会は、ほどほどにつき合ってくる。

「ん、行ってらっしゃい」

―― あぁ、行ってくる。……泊まる準備、してこいよ。

名残を惜しむような間の後、宗輔はそう言い残して電話を切った。

そわそわと落ち着かない気分のまま、私は帰宅した。夕食もそこそこに、その時まではまだまだ時間があるというのに、泊まるのに必要な物を悩みながら揃え始めた。それらをバッグに詰め込む手を途中で止めて、ふと考える。

遅くなってしまったけれど、明日の帰り、宗輔へのクリスマスプレゼントを探しに行こう――。