いつもと違う流れを不思議に思い、私は訊ねた。

「どうしたの?」

「うん……」

宗輔はそれだけ言ってシートベルトを外すと、おもむろに私に口づけた。しかし、私が応える間もなくすぐに唇を離す。

「さっき言った、今度一緒に晩飯作って食べる話だけどさ……」

それがどうかしたのだろうか――。

私は首を傾げながら宗輔を見た。

「そういうのもいいな、って思ったわ。楽しみよ」

すると宗輔は深々とため息を吐き出した。

「ものすごくさらっと言ってたけど、ちゃんと分かってる?」

「何が?」

「俺の部屋に来るってことだよな」

「行っていいなら、だけど」

「俺、期待するけど、いいんだな」

「期待?――私の料理はあんまり……」

「そうじゃなくて……。佳奈、君ってひとは、まったく」

宗輔はもう一度大きくため息をつくと、私の顔を両手で包み込みながらじっくりとキスをした。それから私の目を覗き込むと、確かめるように言った。

「この先に進んでもいいのか、ってことだよ。俺、この前言ったよな。これでも自制してるんだ、って」

「あ……」 

ひどく艶っぽい目で見つめられて、私の鼓動はうるさいくらいに鳴り出した。

付き合い出してまだひと月にもなっていない。そうなるにはまだ早いと思う一方で、宗輔との関係をもっと前へ進めたいと思う自分がいることは確かだ。だから、念を押すような彼の言葉に、私はどきどきしながら頷いた。

「えぇ……」

宗輔は私を抱き締めた。

「今から緊張してきた」

私はくすくす笑いながら、自分から彼の唇についばむようなキスをした。

「その日はお泊りの用意、していくね」

宗輔の体にぎゅっと腕を回すと、彼の胸の辺りからもどきどきとうるさい鼓動が感じられる。

「宗輔さんもどきどきしてる……」

そうつぶやく私に言葉で答える代わりに、宗輔は私の唇を塞ぎ、舌を絡めて深く口づけた。

「んっ……」

キスだけでこんなに気持ちいいのに、それ以上なんてどうなってしまうの――。

宗輔のキスに応えながら、頭の中に甘い不安が浮かぶ。けれどこの日もやっぱり、私は彼の口づけに全身がぐずぐずに溶けそうになり、すぐに何も考えられなくなってしまった。