宗輔を押し戻そうとする私の手に、彼は我に返った様子でようやく体を離した。見ればばつが悪そうな顔をしている。

「すまない。あんまり嬉しくてつい暴走してしまった……」

その表情に、言い方に、胸がキュッと鳴った。愛しい気持ちがさらに大きくなる。私は微笑みながら首を振った。

「違うんです。嫌だったんじゃなくて、シートベルトをしたままだったから苦しくて……」

「っ……気づかなくて悪かった!痛かっただろ?ごめんな」

宗輔は慌てて私の分のシートベルトを外した。

「大丈夫です。……あの、念のため、確認なんだけど」

「確認?」

私はひと呼吸ほど置いて、改めて訊ねた。

「本当に、私を好き、なの?」

私の問いに宗輔は絶句し、続いて苦笑した。

「信じられない?」

「だって、こんなドラマみたいな展開、まさか自分に……。夢なんじゃないかって……」

「ドラマでも夢でもない。現実だ」

そう言うと、宗輔は再び私に深く口づけた。

激しく絡んでくるような彼のキスに応えているうちに、それだけで私の全身は快感に蕩けそうになる。その気持ちを抑えきれずに、私は今度こそ彼にしがみつくように腕をからめた。

しかし、宗輔は切なげな目をしながら、私から体を離した。

「……もう、帰ろう」

何か引かれるようなことでもしてしまっただろうかと、私はおろおろした。

「あの、ごめんなさい。私、何かまずいことでも……」

「違うんだ。まずいのは俺の方。この辺でやめないと、引き返せなくなるから。車の中でなんて、嫌だろ。そういう日をちゃんと作るから、それまで待って」

私は思わず吹き出し、丁寧語を忘れた。

「何よ、それ。そんなこと言われたら、そういう日を意識してしまうじゃない」

「それくらい、君を大切にしたいってことだよ。油断したら、俺はそれくらい佳奈に溺れる自信があるんだ。そうならないように、これでも一応自制してるんだからな」

「……ふ、ふふっ」

その言い回しに、私は笑い声をこぼした。

「自信とか自制って……何それ」

「そのうち、そんな風に笑っていられなくなるくらい、すべて愛してやる。今から覚悟しとけよ」

宗輔の口から出た甘い言葉に、私は息を呑んだ。顔が熱を持つ。