高原は焦れた目をして、けれど恐る恐るといった風に私に口づける。そっと顔を離して、私の両目を覗き込んだ。

「どうして拒否しないんだ。答えを期待してしまうじゃないか」

「こんなことになるなんて本当に悔しいんだけど……」

私は高原の目を見返し、吐息まじりの小声で言った。

「私、高原さんを好きになってしまいました」

次の瞬間、これ以上はないというくらい嬉しそうな笑みが、高原の顔いっぱいに広がった。

こんな顔を見たのは初めて……。

そう思ったと同時だった。再び彼の顔が近づいてきた。

私は目を閉じて、彼の唇を受け止めた。

しかし彼はすぐに唇を離すと、真剣な目をして私に訊ねた。

「噓じゃ、ないんだよな」

急に恥ずかしくなって、私は目線を外しながら頷いた。

「本当です。自分でも驚いているけれど」

「佳奈、って呼びたい。俺のことも下の名前で呼んでほしい」

私の頬に触れながらそう言う高原――宗輔に、私は頷いた。

「はい。宗輔、さん……」

彼の名前を口にした途端、嬉しくてむず痒いような気持ちになった。

「やっと捕まえた」

宗輔は再び私に口づけた。初めは探るようだったキスは、次第に気持ちの昂りを感じるような強さと熱を伴い始めた。

宗輔の舌が私の唇を割るようにして入ってくる。彼はそのまま私の舌を絡め取ると、これまでの想いをすべてぶつけるかのような、優しいくせに激しいキスを続けた。

私は彼の熱に翻弄されながらも、彼の口づけを受け入れていた。彼の昂ぶりが伝染したのか、彼のキスに促されてしまったのか、私の体の内にももどかしさが生まれた。高まる気持ちのままに彼の首に腕を回そうとしたが、すぐさまはっとする。

宗輔のキスはエスカレートする一方だったが、私はそれに必死に抗った。

「ん……んんっ!」