二人はぽかんとした顔で私を見た。それから顔を見合わせると、大声で笑い出した。

「そんなこと分かってるわよ。冗談よ、冗談」

久美子の言葉に大きく頷きながら、戸田もその後に続く。

「そうですよ。本当にやったりしませんよ」

「二人とも、本当にやりそうな勢いだったから焦ったわよ」

私はほっと胸を撫で下ろした。私以上に怒りながら、とんでもない架空の企てまで考えてくれた二人のおかげで、沈んでいた気分が幾分浮上したような気がする。

「二人とも、聞いてくれてありがとう。少し元気が出たわ」

この二人にならお願いしみてもいいだろうかと、私は甘えのようなことを思いついた。ダメもとと思いながら、私はおずおずと切り出す。

「あのさ、二人に改めて相談したいんだけど……」

久美子と戸田は笑いを収めて私を見た。

「しばらくの間、高原さんの対応を二人にやってもらえないかな?せめて課長が異動するまでの間だけでもいい。実はさ、高原さんの対応をした日って、普段以上に課長の風当たりが強くなるの。きついなぁって、思ってね。すごく勝手なことを言ってる自覚は十分にある。だけど……」

「私は別に構いませんよ」

あっさりと言う戸田に続いて、久美子も力強く頷いた。

「私も全然構わないよ。だいだい、普段滅多に弱音を吐かない佳奈がそんなこと言うなんて、よっぽどだと思うんだよね。……実はね」

久美子はそこでいったん言葉を切ると、少しだけ言いにくそうな顔になって続けた。

「大木のそういうベクトルが佳奈に向かうようになって、うちらへの被害がけっこう緩和されたっていうか……。佳奈には罪悪感みたいなものをずっと感じてたし、それくらいのことなんでもないよ」

「そうですよ。課長とか営業の人って、数年でいなくなりますけど、うちらは自分でやめない限りここにいるわけですからね。どんどん助け合っていきましょうよ。それに……」

戸田はピザに手を伸ばしながら、にやっと笑った。

「高原さんなら大歓迎です。だって、目の保養になりますもん」