驚きのあまり、頭の中が一瞬真っ白になったが、私はすぐさま表情を取り繕った。
高原は、私の顔を見た瞬間に片方の眉をぴくりと動かしたが、ポーカーフェイスを崩さない。
私たちの間には微妙な緊張感が漂っていたはずだが、社長も大宮も気づいた様子はなかった。
二人が再びソファに腰を下ろしたため、私も仕方なく大宮の隣に座り直した。
「ほら、宗輔も座って」
社長に言われて高原も座ったが、それが私の目の前だったから気まずくて仕方がない。
早く説明を終えてほしい――。
そう思っている私の願いを叶えるかのように、大宮が淀みなく今後の流れをざっと説明していく。
「――と、なります。それで、ご足労なのですが、高原さんには一度当社へおいでいただきたいのです。ご記入頂きたい書類などは、それまでにご用意いたしますので。よろしいでしょうか?」
高原が真顔で頷いたのを確認して、大宮は続けた。
「なお今後は、こちらの早瀬と一緒にサポートさせていただきますので、何かありましたらいつでもご相談ください」
え、ちょっと待って……。
「私も、ですか?」
大宮の言葉に、私は思わず口を挟んでしまう。
彼は、そうだというように大きく頷いた。
社長が満面の笑みで私に言う。
「早瀬さんも一緒に担当してくれるのなら安心だ」
担当、って……。
困惑して、うっかりつぶやきそうになった。しかし私ははっとして、慌てたことを悟られないように気をつけつつ笑顔で応えた。
「しっかりとサポートさせて頂きます」
「よろしく頼んだよ」
社長に向かって軽くお辞儀をすると、私は正面の高原に顔を向けた。
仕事なのだから、気持ちを切り替えなくては――。