私が答える前に、マスターが言った。
「合コンだったらしいよ」
「合コン?」
「――という名の飲み会だけどね」
私は肩をすくめながら付け加えた。
「そういう顔をするってことは、いい出会いはなかったのかな?」
金子に訊ねられて、私は顔をしかめた。
「出会いがあるどころか……!さっきマスターにも話したけど、すっごく感じ悪い人がいてね。おかげで全然酔った気がしなくて、ここで飲み直してたのよ。不愉快だわ、余計な気を遣うわで、まったくとんでもない飲み会だったわよ」
金子がくすっと笑った。
「それは残念だったね。……でも、佳奈ちゃん、まだフリーなんだね。もう彼氏がいるんだと思ってたよ。今は出会いを探してる最中なの?」
「う~ん、別に積極的には求めていないかなぁ。焦ってるわけでもないし」
「いい人がいたら、っていう感じ?」
「そうね、そんな感じかな。だって、こういうことって、焦ったところでどうしようもないでしょ?」
「それもそうだね」
金子はしみじみとした口調で言うと、不意ににやりとした笑みを浮かべた。
「もしもいよいよマズイってことになったとしても、安心していいからね。その時は、俺と付き合おう。というか、俺の彼女になる?」
息を飲んだ私を見て、金子は即座に前言を撤回する。
「ごめん、今の戯言は忘れて」
私は眉を寄せて金子を見た。
「忘れて、じゃなくて……。彼女がいるのに、そんなことを口にしちゃだめだよ」
「フラレたんだよ」
「え?どうして?いつ?」
私は目をパチクリさせながら訊ねた。私たちが会わなくなったのは、確か一年ほど前。理由は金子に彼女ができたからだったが……。
「ついこの前。最後に言われたんだ。誰にでも優しすぎて安心できない、って。そんなこと言われても、これが俺だしさ……」
「うぅん……」
肯定も否定もしようがなく、また、なんと言ってあげればいいのかも分からない。私はそのまま口を閉ざした。