今回のパーティーは立食形式だった。その方が会場を動きやすく、他の出席者と交流しやすいのではないかという意見が出てのことだった。もちろん、座れるようにと、テーブルと椅子も所々に配置してもらっている。

ざっと見た限りでは、だいたいが担当エリアごとの代理店の方々と、その担当店の世話役がまとまる感じで集まっているようだった。

その中にあって、私は今、マルヨシの社長と川口に捕まっていた。それが嫌だというわけではない。本来であれば私の方が二人の世話をする立場のはずなのにその逆で、世話を焼かれているような状態だったのだ。おかげで、大木から離れていられたことは、良かったと言えば良かったのだが。

「ほらほら、早瀬さん、少し食べなさい。いくらお役目とは言え、何も口にしないんじゃ、お腹が減るでしょうに」

川口が、私の前にサンドウィッチの乗ったお皿を差し出した。

食べてはいけないと言われていたわけではないが、仕事の一環だと思うと、気楽に飲食する気にはならなかっただけだ。しかし頑なに遠慮するのも失礼だろうと思い、私はそれを受け取ってぱくりと食べた。

「あ、美味しいですね」

私の様子を嬉しそうに見て、次に川口は私の手にグラスを持たせる。

「これ、お酒じゃないけど。ノンアルコールカクテルですって」

「あ、ありがとうございます……」

川口は、ほどほどのお酒ですでにご機嫌のようだ。彼女はふと首を傾げると、私をじっと見て言った。

「ところで早瀬さんは、最近イメチェンでもしたのかしら?」

私は目を瞬かせながら答える。

「え?いいえ。何も変えていませんけれど」

「あら、そうなの?」

と言いながら、川口はますます私をしげしげと見た。

「なんだかねぇ。ますますきれいになったような気がしたのよね。……あら、待って。もしかして、いい人でもできたのかしら?」