「どうして?」

首を傾げる私に宗輔はくすりと笑って、軽くキスをする。

「自分の部屋の方が、佳奈を引き留めてゆっくり味わえるだろ?」

「もうっ!嫌らしいんだから」

顔を赤くする私に、宗輔は笑う。

「あはは。俺が迷惑じゃないんだから、決まりってことでいいんだよな?今週は年明けの挨拶回りがあって、俺の方が落ち着かないから――来週末あたりから来るか?」

「本当に行ってもいいの?」

確認するように訊ねる私に、宗輔は大きく頷いた。

「もちろん。土曜日、仕事が終わったら迎えに来るから待ってて。その日、スペアキーも渡すよ」

「スペアキー?」

「持っていた方が、佳奈の都合のいいタイミングで来れるだろ?でも、俺の迎えが必要なら――」

私は首を振って、宗輔の言葉を遮った。

「スペアキー、私が持ってもいいのなら受け取るわ。今だってそうなのに、毎回迎えに来てもらうのは悪いから」

「俺は全然構わないんだけどな。――今日はそろそろ帰るよ。このままいたら、佳奈を抱きたくなってしまいそうだ。新年早々色っぽい顔して出社するのは、色んな意味でまずいだろ」

そんなことを言いながらも、宗輔は艶めいた目で私を見つめた。

その目をうっかり見返してしまった私は、キスしてほしいと口走りそうになって、慌てて目を逸らした。

「また、来週ね」

しかしそれには答えず、宗輔は私を抱き寄せた。

「帰る前に少しだけ、佳奈がほしい――」

そう言うと彼は私にキスした。

思ったことが伝わってしまったのかとどきどきしている間にも、宗輔のキスは深くなっていく。そのせいで体が熱くなり始め、私は慌てて彼から離れた。

「も、もう、終わりっ」

宗輔はくすくす笑う。

「そうだな。止まらなくなるのはまずい。――またな。おやすみ」

「……おやすみなさい」

週末は宗輔の部屋で過ごす――。彼との約束事が、また一つ増える。その喜びが、彼が帰って行くことへの寂しさをずいぶんと和らげてくれた。