私は宗輔の両親に見守られながら、彼の車の助手席に乗り込んだ。二人の姿が遠くなってから深々と息をつく。安心のため息だ。彼の両親は私を温かく受け入れてくれた。そのことに安堵して緊張がとけた途端に、どっと疲労感が襲ってきて、私は車のシートに体を預けた。

「はぁ……緊張した……」

「お疲れ様。ありがとうな」

「やっぱり仕事で会うのとは全然違うわね」

「そんなもんか」

「そんなものよ。あれ、そう言えば確かお兄さんがいらっしゃるのよね。帰省はされなかったの?」

「次の連休に帰って来るって言ってた。その時には会えるんじゃないか。――ところで今夜、どうする?どこかで晩飯でも食べていくか?」

「宗輔さんは?どうしたい?」

「本当は――佳奈と一緒に家で晩飯食べたい。だけど、疲れてるだろうから、なんか適当に買って帰って、一人で食べることにする」

その言い方がどこか拗ねた子供のようで、私は思わず吹き出しそうになる。それを抑えながら、こう言ってみた。

「それなら……うちに、寄る?途中でお惣菜を買ってもいいし、実家からもらってきた野菜なんかもあるから、何でもいいなら作るけど」

「疲れてるんじゃないのか?」

「大丈夫。緊張はしたけど、疲れてはいないわ。それに、宗輔さんといた方が元気になるし、一緒にご飯食べたりしたい」

「佳奈は、俺を嬉しがらせることばっかり言ってくれるよな。ハンドル握ってなかったら、絶対にキスしてる」

「もう、またそんなこと言って……。えぇと、宗輔さんの部屋みたいに立派じゃないから恥ずかしいんだけど」

「俺は、佳奈の部屋も見たい」

「じゃあ、ひとまずスーパーに寄って買い物しましょ」

こうして適当に食べる物を買い込んで、私は宗輔と一緒に自分の部屋へ向かった。