「そっか。昴くんも忙しいね」


昴くんがいないことに、わたしはとくに気にはしなかった。


だからこそ、教室に戻ってびっくりした。



「…ぐあっ!!…や、やめて…くれ…!」


教室からもれるうめき声。

廊下にまで響いていたから慌てていってみると、なんとエスコート科の生徒を昴くんが床に押さえつけていた。


それは、同じクラスの江口(えぐち)くん。


「昴くん!…なにしてるの!?」

「江口が不審な動きをしているのが気になって体育の授業後にここで見張っていたら、アリス様の席になにかをしようとしたので取り押さえたまでです」


昴くんがさらに締め上げると、その苦痛にたえられなくなった江口くんの手からなにかが床にこぼれ落ちた。

――小さな金色の粒。


手に取ると、それは画鋲だった。