「佐藤さん、四之宮くんに教科書を見せてあげてください」

「は…、はい」


いつも完璧な昴くんが忘れ物なんてめずらしいな。

そんなことを考えながら、わたしは昴くんに教科書を手渡す。


――そのときっ。

教科書の裏表紙が目にとまって、わたしははっとした。


国語の教科書の裏表紙には、【四之宮昴】という名前が書かれていた。


つまりこの教科書はわたしのものではなく、…昴くんのものだった!


「ありがとうございます、アリス様。少しお借りします」


そう言って、昴くんはまるでわたしの教科書かのようにして受け取る。


突然机の上に教科書が現れておかしいなとは思ったけど、これはわたしのものじゃなくて昴くんのだったんだ。

わたしが教科書がないとなれば先生に叱られるから、そうならないように自分の教科書を差し出して、代わりに昴くん自身は教科書を忘れたことにして…。