「…え?」


キョトンとして下を向くと、さっきまでノートしか置いていなかった机に国語の教科書が置いてあった。


まるで空から降ってきたかのような感覚に戸惑いながらも、ひとまず指示されたところを朗読する。


「ありがとうございます、佐藤さん。それではその続きを、隣の席の四之宮くんに読んでもらいます」

「はい」


返事をして立ち上がる昴くん。

ところが――。


「…先生、申し訳ございません。教科書を忘れてしまいました」


…えっ!?

昴くんが…忘れ物?


「信じられませんね。教科書を忘れるだなんて」


眉をひそめる先生。


「…ですが、四之宮くんはこれまでそのようなことは一度もなかったので、今日は大目に見ましょう」


昴くんの日頃からの行いのおかげで、ひとまず叱られることはなかった。