でも、ことを荒立ててほしくないから、わたしはなんとか笑ってごまかした。


1限は国語。

この国語の先生は、学校一厳しいで有名。

時間厳守、忘れ物は絶対に許さない。


この前、たまたま教科書を忘れた女の子がいたけど、先生は相手がお嬢様なんて関係なく叱って、反省として廊下に立たせていた。


しばらくの間は、学校中で『この前廊下に立たされてたコ』と後ろ指を指され、赤っ恥をかくことになる。

だから、とくにこの授業は忘れ物をしないようにとみんな必死。


「前回の続きで、43ページを開けてください」


わたしは、机の中に置いていた教科書に手を伸ばす。


――しかし。

…あれ……。


いくら探しても、国語の教科書が見つからない。

置いて帰っているから、机の中にないはずないのに…!


「それでは、5行目から読んでもらいます。佐藤さん、お願いします」