しかも、鏡越しにわたしに目を向けにっこりと笑っている。


選ぶことに集中していて気にもとめていなかったけど…。

…そういえばわたし、さっきからだれかと話していたと思ったら――。


「だっ…、だれ!?」


試着室の中で、思わず後ずさりをする。


わたしのすぐそばにいたのは、レースがあしらわれた大人っぽい紺色のワンピースを着た…わたし。


「え?え?…え?」


意味がわからず、わたしは何度も目をこする。

だけど、そこに立っているのはやっぱりわたし。


「…えっと、どういうこと…?」


わたしは目の前の自分に語りかける。

まるで鏡の中から出てきたかのように、わたしとそっくり。


すると、もう1人のわたしがニッと笑ってみせた。


「そりゃ、驚くよね〜。アタシもさっき見かけたとき、びっくりしちゃったもん!」