「『好き』なんてそんな大事な言葉は、簡単に使っちゃ――」

「“本気”って言ったらどうする?」


虹斗くんは、押しのけようとしていたわたしの両手を簡単に捕まえてしまう。


子犬みたいで、かわいい弟のような存在だと思っていた虹斗くん。

それなのにわたしの腕を捕まえる力は強くて、まったく振りほどけない。


「アリスちゃんは、好きな人いるの?」

「えっ…、好きな…人?」


一瞬、顔も覚えていないるぅくんのシルエットだけが頭の中に浮かんだ。


「いないなら、ヒミツで付き合っちゃう?ぼくならアリスちゃんのことを全力で守るし、全力で愛してあげるよ」

「…まっ、待って…」


わたしの唇を見つめて迫ってくる虹斗くんから、なんとか逃れようとしてわたしは抵抗する。

その反応を見て、不思議そうに首をかしげる虹斗くん。