そのひとつひとつに、わざわざ声をかけてくれる。


「ありがとう、昴くん。早く授業に戻らないとだね」

「その必要はありません。代わりに慎太郎と虹斗が出席していますから、アリス様は次の授業までここでお休みください」


とは言われても元気だし、再び授業に戻ろうとしたけどそれを昴くんが阻止する。

足をケガしているからと、ダンスシューズすらはかせてくれない。


「昴くん、ちょっと飲み物買いに行きたいから…せめて靴は返してほしいんだけど」

「それなら、俺が買ってまいります。なにがよろしいでしょうか?」


本当に、昴くんは徹底している。

わたしがどれだけ「自分で買いにいける」と言っても、そんな雑用ですらも引き受けてしまう。


「それじゃあ…、麦茶で」

「かしこまりました」


そのとき、保健室に足音が響いた。