本当は初めてだったけど、とは言えない。


「でも、初めて見るステップもあったけど、あれはアメリカでは主流なの?」


その言葉にギクッとする。

首をかしげる虹斗くんが、純粋な瞳でわたしを見つめる。


初めて見るステップというのは、ただの素人のわたしの足踏みのことだろう。

ステップでもなんでもない。


「いや、あれは――」


と言いかけたとき、拍手が聞こえてきた。

振り返ると、先生がわたしたちに向かって大きな拍手を送っている。


「さすがですね、佐藤さん!ダンスはお手のものかしら?」

「いえ、そんな…」


わたしはなにも、ほめられるようなことはしていない。


虹斗くんのダンスは、他のエスコート科の男子生徒よりも格段にうまかった。

それが目立って、わたしまでうまく踊れているように見えてしまっただけだろう。