たしかに、アリスちゃんが誘拐されたとなれば、アリスちゃんパパなら何十億とお金積みそうなところだけど――。


残念ながら、ここにいるのは“ありす”であって“アリス”じゃない。

わたしからは、なにも取れるお金なんてないのに。


「さっそくだが、父親に電話して身代金を用意してもらおう。スマホを出せ」

「出せと言われても、手を縛られているから出せないんですけど…」

「だったら、どこにあるんだ」

「スマホなら、制服のスカートのポケットの中に…」


と言って気づいた。


いつもなら、スマホを入れていて少し膨らみのあるポケット。

だけど今はその膨らみもないし、硬いものが入っている感触もない。


「…やっぱりない!」


腕の拘束を解いてもらって、スカートのポケットに手を突っ込んだけどスマホはなかった。