わたしはその場から連れ去られてしまったのだった。



* * *



「…あれ。ここは……」


わたしはゆっくりとまぶたを開ける。

冷たくて埃っぽい床に、わたしは横にされていた。


…どこかの廃ビルだろうか。

割れた窓ガラスの向こう側には月明かりが見える。


手足を動かそうとしたけど、紐のようなもので縛られていた。


「逃げ出そうとしたって無駄だからな」


そんな声が聞こえてなんとか後ろに顔を向けると、男の人が3人立っていた。


鍵を落としたと言っていた金髪の人と、暗がりではっきりとはわからないけど茶髪っぽい人が2人。


「佐藤アリスだな」

「は…はいっ」


『佐藤ありす』ではあるから、一応返事をする。

だけど、たぶんこの人たちが言っているのはアリスちゃんのほうだと思う。