ちょっとだけならいいよね。

それに、アリスちゃんの保留状態もいつ終わるかわからないし。


「どうかしましたか?」


わたしは男の人に近づいた。


「実は、この側溝に家の鍵を落としてしまって…」


男の人は、背の高い金髪。

高校生くらいだろうか。


「…暗くて中が見えなくて。でもオレ…今スマホの充電が切れてて」

「それなら、わたしのスマホでよければ!」


わたしはスマホのライトを使って側溝の中を照らした。


「どうですか?鍵…、見えますか?」


わたしもいっしょにのぞき込む。


すると――。


「…こんな演技に引っかかるなんて。佐藤アリスってお人好しなんだな」


そんな声が耳元で聞こえたと思ったら、わたしは突然後ろから口を塞がれた。


「んん…!?」


声を出してみたけど、手で塞がれていて思うように助けを呼べず――。