そのとき、ネクタイが揺れているのが目に入ったから。


ネクタイピンで止まっていたほうが、もっとかっこよくなるんじゃないかと思って。


わたしだって、これでも好きな人のことは見ているつもり。


「「…あ、あのっ…」」


タイミングを合わせたかのように声が重なり、はっとしてお互い同時に口をつぐむ。

――すると。


「ほんとかわいすぎるから」


そう言って、昴くんがわたしの髪を愛おしそうになでた。


「…俺はイージスのリーダーなのに。この一線は絶対越えないようにと思って、気持ちも留めておくつもりだったのに…」


頬をほんのり赤く染めながら、照れたように視線をそらす昴くん。


「もうありすのこと、警護対象者として見れないじゃん」


その言葉に、わたしの胸がドキッと鳴る。


「…ごめん。これまでのスカしたイージスのリーダーは、もうやめてもいいかな?」