するとそのとき、後ろから視線を感じた。

振り返ると、返却する食器が乗ったトレイを持った昴くんが気配を消して立っていた。


おそらく、今さっきの慎太郎くんとの会話は聞かれていないとはいえ、昴くんを前にして表情が硬くなるわたし。


「す…、昴くんももう食べたんだ!早いね…!」


平静を装おうとしたら、逆に声が震えて上ずった。

…動揺していることがバレちゃう。


昴くんは食器を返却すると、チラリとわたしに視線を向けた。


「アリス様、少しよろしいでしょうか?」

「…えっ?」


とわたしがつぶやくよりも先に、昴くんがわたしの手首を握った。


「す、昴くん…!?」


そしてわけもわからないまま、昴くんに連れていかれてしまったのだった。


やってきたのは、人気のない校舎の廊下。


「急にどうしたの…?昴くん」