「やめてよ、昴くん…!わたしは、『ありす』って呼んでくれてうれしかったんだよ?」


昴くんと距離が近くなったような気がして。

それに、なんだか懐かしくも感じた。


「一瞬だったとはいえ、敬語でもなかったよね?初めて素の昴くんが見れたかもっ」

「ほめられるようなことではありません…!イージスのリーダーとして、俺だけでもそこは守らなければなりません」

「でも…」


せっかく近づいたと思った距離が…また離れた。


「アリス様は大事な警護対象者。これからも全力でお守りします」


そう言って、まっすぐにわたしを見つめる昴くん。



――“大事な警護対象者”。

昴くんにとってわたしって、…本当にそれだけ?


池に飛び込んでわたしを助け出してくれたのも、必死に何度もわたしの名前を呼びながら人工呼吸をしてくれたのも――。