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 一般客のように見える三人は、怯える宮義さんたちの口をガムテープでふさぎ手足を拘束する。
 その間も私と望ちゃんにはナイフの切っ先が向けられていた。

「お前もだ」

 私もそう指示されたけれど、望ちゃんをつれて行かれるわけにはいかない。
 竹刀はカバンと一緒に別教室に置いてあるし、代わりになりそうな長い棒もない。戦うことは無理そうだ。
 でも、だからといって大人しく渡すわけにはいかないよ。
 私は絶対に離れないって意思を込めて望ちゃんに抱きついていた。

「あさひちゃん……」

 望ちゃんは不安そうな声で私を呼ぶ。
 私は大丈夫だよって意思をこめるようにギュッと抱きついて、ナイフを向けてきている男をにらんだ。

「おい、あんまり時間をかけられないぞ?」
「わかってるよ。おい! ホントに離れろ!」

 宮義さんたちを拘束し終えた人たちに言われて、ナイフを持った男が片腕を伸ばしてきた。
 私の肩をつかんで、望ちゃんから引き離そうとする。

「いやっ!」

 強くつかまれて痛いけれど、望ちゃんを連れていかれるわけにはいかない。その一心で望ちゃんから離れなかった。