窓から屋根の上へと上がって、朔さんに少し支えられながら隣に座る。
 隣の朔さんは夜空を見上げて言った。

「俺、星を見るのが好きでさ……星がよく見える新月の夜が一番好きなんだ」

 あまり自分から積極的に話すタイプに見えない朔さんが語るので、つい聞き入ってしまう。
 暗闇の中、家の明かりに僅かに照らされ星について語る朔さんがどうしてか輝いて見えた。
 話を聞きながらじっと見ていたら、ふと私の方を見た彼と目が合ってしまう。
 なんとなく恥ずかしい気分になって、視線をそらすように私も空を見上げた。

「すごく、キレイですね」

 朔さんの言うとおり、空に月の明かりがないぶん星の光が際立って見える。
 天の川も見られそうな星の多さに、感嘆のため息が出た。

「ああ、そうだろ?」

 同意した朔さんはまた夜空を見上げたみたい。
 そのまま二人で黙って夜空を見ていた。
 重いわけじゃない、気まずい雰囲気もない。心地のいいくらいの沈黙だったけれど、私は朔さんに声をかけた。

「あの、朔さん」
「ん?」

 心地のいい沈黙を破っても、朔さんは不機嫌になることなく短く応えてくれる。
 それにホッとして、私は話を続けた。

「あの、ありがとうございます。……私の思いを守ってくれて」

 可愛いものが好きだっていう私の思い。その思いごと私を守ってくれるという宣言通り、朔さんは私を守ってくれた。
 女子剣道部部長の那良先輩からの勧誘があったときも守ってくれたけれど、あの後も私が周りから必要以上にカッコイイと言われたり、可愛いもの好きを否定されそうになったとき話題を変えて私の気持ちを守ってくれた。
 さりげない優しさだけれど、とても嬉しかったんだ。
 だから、ちゃんとお礼を伝えたかったんだって話した。