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 手を引かれながら板張りの廊下を進み、確かこっちだったよね……と思いながら満さんたちの部屋の方へ向かう。
 その途中で、満さんを探していたらしい晦さんに出会った。

「満! お前どこ行ってたんだよ。また迷ったんじゃないかと探しただろ?」

 どうやら迷った満さんを見つけて連れ戻してくるのはいつも晦さんの役割らしい。

「ああ、ごめん。ウタを探してたら迷っちゃってね、あさひさんに連れてきてもらったんだ」
「あさひが?」

 そこで晦さんは私をあらためて見ると、軽く息をのんだ。

「あさひ、髪下ろすとイメージちょっと変わるな? なんか、かわいい」
「かっかわいいなんて……」

 なんでみんな私が髪を下ろすとかわいいって言うの? うれしいけど、やっぱり恥ずかし過ぎて困ってしまう。
 思わずうつむくと、晦さんの手が伸びてきて私の髪の毛の先を少しつまんだ。

「それに風呂上がりだからか? 少ししっとりしてて……色っぽいな?」
「ふぇい!?」

 かわいいだけじゃなくて色っぽいとか! 恥ずかしいを通り過ぎて頭が沸騰しそう。
 見上げた晦さんは、赤茶のつり目を楽しそうに細めていた。

「あさひ、俺の彼女になりたいって言うならいつでも歓迎するぜ? 考えておけよ」
「は、はぁ!?」

 とんでもない誘いにもう本当にどうして良いのかわからない。
 これ、冗談だよね? まさか本気?
 テンパっていると、一部始終を見守ってくれていた満さんが間に入ってくれる。