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「ちょっと用事が出来たから先に部屋に戻ってて」

 お風呂から上がって脱衣所を出たとき、望ちゃんはそう言って客室とは別の方へと向かって行ってしまった。
 どうしたんだろうって思いながらも、何度か往復している客室までならさっきみたいに迷うこともないだろうから問題ないよねと歩き出す。
 そうして客室の方へと戻ったら。

「ウター、どこにいるんだー?」

 太っちょ猫のウタの名前を呼ぶ満さんがいた。
 手にはウタのおやつらしきものを持っている。

「どうしたんですか? 満さん」
「あ、あさひちゃ……ん?」

 声をかけると、私に気づいた満さんはパッと笑顔を向け、途中で不思議そうな顔になった。

「あさひちゃん、だよね? なんか、髪下ろすと雰囲気変わるね」
「そう、ですか?」

 確かにいつもポーニーテールだから、髪を下ろすと雰囲気は変わると思う。でもそんなに驚くほど変わってるかな?

「うん、かわいさが増してる」
「ふえっ!?」

 優しいほほ笑みで、お世辞もなく素直に出てきた言葉だってわかる。
 かわいいって言われるのは嬉しいけれど……でも、照れちゃうよ!
 赤くなりそうな頬を見せないように顔を背けた私は、話題を変えた。