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「じゃあ、今晩はお世話になります!」

 荷物を持って月島家に行くと、望ちゃんと望ちゃんのおじいさんが出迎えてくれた。
 おじいさんに会うのは初めてだけど、満さんに似たほんわか優しい雰囲気が癒やされる。

「孫たちがいつも世話になってるみたいだからね。ゆっくりしていくと良い」

 目元の笑いじわを濃くして、おじいさんは私を招き入れてくれた。

「お邪魔します」
「じゃああさひちゃん、部屋に案内するよ」

 家に上がらせてもらうと、早速望ちゃんに手を引かれる。
 私はついて行きながら率直な疑問を口にした。

「望ちゃんちって大人はおじいさんしかいないの? お父さんとお母さんはお仕事?」

 神社の神主をしているって聞いていたし、そういうお仕事に出てるのかな? っていう素朴な疑問だった。

「おじいちゃんとおばあちゃん、お父さんがいるよ。お母さんは私を産んだ後すぐに亡くなっちゃったし」

 変わらない明るい口調の答えに、驚くと同時にしまったって思う。
 自分が両親そろっているからそれが普通に感じちゃうけど、そうじゃない人もいるんだってちゃんと考えてから聞くべきだった。

「あ……えっと、ごめんね?」
「気を遣わなくていいよ。亡くなったの私が赤ちゃんの頃で覚えてないし」

 本当に気にしていないようで、逆になんて言えば良いのかわからない。
 そんな私の様子に気づいてか気づかないでか、望ちゃんは家族について話し出した。

「お父さんは出張神主で色んなところに出向いてるし、おばあちゃんは神社の管理で色々と忙しくしてるからあまり家にはいないんだ。だから基本大人はおじいちゃんだけかな?」

 顎に人差し指をつけながら考えるように話した望ちゃんは、「でも」と笑顔になる。

「だからって寂しくはないよ? 兄さんたちがいるからね!」
「……確かに」

 四人のクセが強そうなお兄さんたちを思い出して、クスッと笑った。
 そして、笑ってから気づく。