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 家に帰った私は、早速お泊まりの準備を始めた。

「えっと、スマホの充電器と着替えと……あとはなにが必要かな?」

 チェストの引き出しを色々開けながら必要そうなものがないか見てみる。
 もし忘れ物があっても取りに戻ってこれないことはないけれど……隣とはいえ望ちゃんの家の門は離れていて距離があるから出来れば戻りたくない。
 そうして小さな引き出しを開けると、ふと一つの御守りに目が留まった。

「あ、ここに入れてたんだっけ」

 赤い生地に黒い糸の刺繍で【御守り】と書かれたそれは、おばあちゃんが私にって作ってくれた御守りなんだ。

『あさひが健康に大きくなって、幸せになれるようにと願いをこめたんだよ』

 そう言って渡されたっけ。
 そのときのことを思い出すと、急に寂しくなってきた。
 寝たきりになってしまって介護が必要になってしまったおばあちゃん。
 回復はするらしいけれど、しばらくは色んなリハビリが必要だって聞いた。
 しばらく会えていないから、思い出すのは幼い頃長期休みの度におばあちゃんの家へ遊びに行ったときのこと。

「よく、昔話を聞かせてもらったな……」

 【太陽と月の巫女】のお話。

 本とかで見たことはないから、もしかしたらおばあちゃんかひいおばあちゃんのオリジナルだったのかも。
 お母さんも昔おばあちゃんやひいおばあちゃんに聞かされて覚えたって言っていたし。
 私も、何度も聞かされたから今でも覚えちゃってるよ。

「おばあちゃん、元気かな?」

 今はまだ私たちが引っ越しをしたばかりだし、おばあちゃんもリハビリが始まったばかりだからって会えていないけれど、落ち着いたら会いに行きたいなって思った。