***

「え!? あさひちゃんメイド姿で接客するの!?」

 キレイに巻けている卵焼きを口に運ぶ直前、弦さんがとても驚いた声を出した。
 今はお昼休み。昨日と同じように生徒会室でみんなと一緒に望ちゃんのお手製豪華弁当を食べているところだ。
 お母さんに望ちゃんのお弁当の話をしたら、申し訳ないと言いつつ今朝は昨日ほど忙しそうじゃなかったのにお弁当を作ってはくれなかった。
 まあ、その代わり『みんなにデザートとして食べてもらって』と焼きドーナツを作ってくれたけれど。

「はい、望ちゃんと一緒に」

 取り寄せ皿にお重から炊き込みご飯をよそいながら答えると、弦さんはとてもキラキラした目を私に向けてきた。

「いいね! きっとかわいくなるんだろうな。絶対見に行くから!」
「あ、ありがとうございます」

 絶対に私よりカワイイだろうなって思う弦さんに言われると少し複雑。でも、似合わないなんて言わずにかわいくなるって言ってくれたことは素直にうれしかった。

「そうか? あさひならカワイイよりキレイな感じになるんじゃねぇか?」

 煮物のコンニャクを食べながら、晦さんが会話に加わってきた。
 男子にも女子にも、『格好いい』とか『男勝り』なんてことしか言われてこなかった私は『カワイイ』もそうだけど『キレイ』なんて言われたこともなくて照れる。

「き、キレイ、ですか?」
「ああ。ストレートの黒髪もキレイだし、高校生なるくらいには絶対美人になるぜ? 彼女にしたいくらいだ」

 ニヤリと笑う晦さん。
 冗談だとは思うけれど、『彼女にしたい』なんて言われたら恥ずかし過ぎてなんて言ったら良いのかわからない。
 光栄ですとでも言えば良いのかな? 晦さんは目つきは悪いけれど人を引き付ける魅力があるから色んな人に好意を持たれてるみたいだし。
 なんていい返しを考えていると、朔さんの不機嫌な声がその場に響いた。