家の門に戻るまでの道のりを俺はボーッとしながら歩いていた。
 隣の家に行っただけだってのに、その距離はこの塀のおかげで普通より長い。
 でも、色々考えていた今の俺にとってこの距離はちょうど良かった。

「あいつが望の友だちをやめるって言い出さないか、確認のつもりで行ってみただけだったんだけどな……」

 様子がおかしくて、それが心配だったってのももちろんある。
 でも、こんな夜に訪ねて行ってまで聞こうと決めたのは、また望の友だちが離れていかないかが心配だったからだ。
 【厄除け】の力を持つ俺は望の近くにいることが多い。
 厄――つまりよくないこと自体を避けることが出来るから、望を狙うやつらも俺といるときは寄ってくることはないから。
 でも、だからこそ望の友人関係も見てきた。
 望が襲われる度、側にいた友だちは怖がって離れて行ってしまう。
 その度に望は『仕方ないよ』と悲しそうに笑うんだ。
 実際、望の近くにいれば巻き込まれる。
 あさひが離れることを選んだとしても仕方がない。
 でもせめて、望があまり傷つかないように友だちという関係だけでもそのままでいてくれないか頼むつもりだった。
 今日みたいに守ってくれなくてもいいからって。

「でも……」

 カワイイものが好きで、似合わないって言われたくなくて剣道をやめようとしたんだと話してくれたあさひは、望の友だちを止めようなんてこれっぽっちも考えていなかった。
 真っ直ぐ俺を見上げてくる目はキリッとしていて力強く、ウソのない黒い瞳は吸い込まれそうなほどキレイだった。
 それでいて、髪を下ろしていつもと違う雰囲気だったあさひはとてもかわいくて……。
 守りたいって、思ったんだ。