「あの不審者と何かあったのか? それか、俺たちに関わるのは嫌だって思ったのか?」

 黙り込んでしまった私に、朔さんは少し焦ったような表情で言葉を重ねる。
 基本無表情だと思ったけれど、よく見るとちゃんと表情の変化があるんだなって気づいた。

「違います、みんなのこと嫌だなんて思ってません」

 首を横に振って否定すると、見上げて朔さんのキレイな顔をジッと見る。

「確かにあの後から私落ち込んでました。でも、それは私の問題なんです」

 こんな夜に訪ねてくるほど気にしてくれた朔さんに、これ以上変な心配をさせるわけにはいかない。
 私は、自分の悩みを朔さんに話すことにした。
 私はカワイイものが大好きだってこと。でも、前の学校では剣道をしているせいで似合わないって言われていたこと。だから今の学校では剣道をしないって決めたこと。全部話した。

「……じゃあ、やっぱり望の側にいるのは嫌なんじゃ」
「それは違います!」

 朔さんの申し訳なさそうな言葉を私は即座に否定する。かわいくて大事な友だちである望ちゃんから離れたいなんてこれっぽっちも思ってない。
「でも、剣道はしないって決めたんだろ? 望の側にいたら、これからも今日みたいなことが起こる。俺たちが側にいればいいけど、またみんなの目の前で戦うことになるかもしれない」
「そのときはそのときです。覚悟を決めて、剣道で望ちゃんを守ります!」