「じゃあ僕も一緒に帰るよ、教室で待ってて」

 そう宣言した弦さんは、銀髪を揺らしながら先に校舎の方へと戻って行く。
 その後を追うように朔さんと望ちゃんと校舎へ向き直り、見えた光景にギョッとした。
 各教室がある窓から、何人もの生徒が顔を出している。
 近づくにつれてザワザワと話す彼らの声が聞こえてきた。

「すっげぇ……大人相手に勝ったぞあの子」
「すっごく格好良かったね!」
「うん、ドキドキしちゃった!」

 そんな言葉が聞こえてきて、しまった! って思った。
 私が剣道をしている姿を見た人は、大抵がカッコイイって言う。そして、クールなイメージを押しつけてくるんだ。
 望ちゃんを守ったことは後悔していないけれど、また前の学校と同じような状況になっちゃうのかな? って落ち込む。

「……あさひ? どうした?」

 不思議そうな声で朔さんが顔をのぞき込んでくる。

「あ、いえ。何でもないです!」

 変な心配をして欲しくなくて慌てて笑顔を作ったけれど、落ち込んだ気持ちが浮上してくることはなかった。