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 教室にはまだ何人かクラスメートが残っていたけれど、かまわず窓際の私の席へと進む。
 竹刀を袋から出して(つか)を握りしめると、ちょうど男の人が追いついて教室に入ってきた。

「なに? だれ?」
「あんな先生いたっけ?」

 入ってきた不審者を見ても不思議そうな顔をするだけのクラスメートたち。
 そんな中を不審者の男の人は気にせず私たちに近づいてきた。
 私は走って息切れをしている望ちゃんをかばうように間に立ち、竹刀を構える。

「ん? なんだ? お前護衛だったのか?」

 望ちゃんを守る私に不審者は軽く驚き、ついでバカにした様に笑う。

「どれだけ心得があるのか知らないが、月島の四つ子とは違う。ケガをしないうちにその子を渡した方が身のためだぞ?」
「なんと言われても、望ちゃんをあなたみたいな人に渡すことなんてしないよ!」
「はぁ? ふざけんなよ? 本気でケガしても知らねぇからな?」

 私の宣言は不審者の男のかんに障ったみたい。
 かなり不機嫌になった不審者は、懐から警棒のようなものを取り出す。
 一気に不穏な雰囲気になって、クラスメートたちが怖がっているのを感じた。

「さっさとどけ!」

 最初の落ち着いた様子の語り口調が崩れた不審者は、そのまま警棒を振り上げる。
 大人と子どもだし、力で勝てないのはわかりきってた。
 私は男のスキをつくように脇を狙って竹刀を打ち込む。

「ぅぐっ」