同じ武道でも、空手のことはよく知らない。
 それでも、真剣な顔で相手へ突きや蹴りを繰り出す朔さんは息を呑むような動きで次々とポイントを取っていって、自然とカッコイイって思った。

「そこまで!」

 先生の声で、終わったんだとハッとする。
 思わず見入っちゃってた。

「ありがとうございました」

 淡々とした声であいさつを終えると、朔さんは軽く目を閉じてフーと息を吐く。その目が開かれ顔が上がると、視線が合った。

「あ、来てくれたのか」

 いつものあまり感情が込められていないような声を上げて、朔さんは私たちの方に近づいてくる。

「校内案内のついでだけどね。朔兄さんの試合って本当にすごいよね!」

 手を軽くパチパチと叩いて賞賛する望ちゃん。
 確かに、って心の中でうなずいていると、朔さんが黒い目を私に向けて問いかけてきた。

「……あさひは?」
「え?」
「あさひも俺の試合、すごいと思ったか?」

 じっと見られて、なぜだか変に緊張する。
 早くなる心臓の鼓動に戸惑いながら、私は正直な気持ちを答えた。

「はい、すごかったです! 空手のことはよく知らないけど、朔さんの試合は空気がピリッとしていて……強かったし、格好よかったです!」

 つい拳を握りながら語る。
 力み過ぎちゃったかな? って心配になったけれど、朔さんは少し目を丸くしたあとふわりと眩しいくらい優しい笑みを浮かべた。

「そっか、ありがとう。……あさひにそう言われると、特に嬉しいな」