「なにしてるの?」

 お手洗いから戻ってきた望ちゃんが厳しい顔をして宮義さんたちをにらんでいた。

「な、なにって……なにもしていないよ? ただ、ちょっとお話してただけ」
「そ、そうよ? 転入したてで慣れたかなー? と思って」

 宮義さんたちは平気でウソをつきながら私から離れていく。
 それをにらみながら見送ると、望ちゃんは「ふぅ」と息をはいて眉を下げた。

「……ごめんね、あさひちゃん。お兄ちゃんたちが人気者なせいか、私に近づく人はお兄ちゃん目当てなんだって思われるみたい。それであういうふうによく思わない人もいるんだ」

 他にも理由はあるけれど、ああいう人たちがいるから仲の良い友だちも出来ないんだって、望ちゃんは悲しそうに話してくれた。

「でも、あさひちゃんは私から離れないってハッキリ言ってくれたよね。ありがとう、本当にうれしい!」

 悲しそうな顔がまぶしいものを見るような笑顔になる。
 そこまで喜んでくれたことがうれしくて、気恥ずかしくて。
 私は照れ笑いを浮かべて緩む唇を開いた。

「友だちだもん。……私こそ、一緒にいてくれてありがとう、望ちゃん」