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 望ちゃんが案内してくれたのは生徒会室。
 電気ポットも置いてあって便利だから、満さんの生徒会長権限で今年から使わせてもらってるんだって。

「お、来たな。準備は出来てるぜ」

 生徒会室に入った途端、晦さんがニッと笑って私たちを招き入れる。
 中ではテーブルの中央にお重が広げられていた。

「うわっ! すごい!」

 思わず声を上げる。
 おにぎりに、唐揚げ、卵焼き。他にも蒸し野菜とか、色とりどりのおかずがあった。
 見ているだけでも美味しそうで、ちょっとうらやましい。
 お母さん今日は特に忙しかったし、私は料理あまり得意じゃないから作れないし。
 仕方ないこととはいえ、私の菓子パンは見劣りするなぁ。
 なんて、ちょっと悲しく思っていたんだけど……。

「美味しそうだろ? 今朝、望があさひさんに食べてもらいたいっていつも以上に頑張って作っていたんだよ」
「え!?」

 すでに座っている満さんがニコニコとほほ笑んで教えてくれた。
 持ってくるのは重いから、いつも晦さんに運んでもらってるけれどって。
 望ちゃんに目を向けると、照れくさそうにはにかんでいた。

「なにが好きかわからなかったから、私の得意料理詰め合わせただけなんだけどね。……あ、でももしかして自分のお弁当持ってきてた?」

 ハッと気づいて聞かれ、私は苦笑いしながら持ってきていたカバンから潰れた菓子パンをそっと出した。