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 午前の授業はつつがなく終わる。
 もっと質問攻めにあったりするんじゃないかって思っていたけれど、ああいうのはマンガやドラマの中でだけだったみたい。
 あまり話しかけてくる子もいなかったから、基本的に望ちゃんとしか話さなかった。
 そして昼休み。四時限目の授業の片づけを終えた途端、望ちゃんが昼食に誘ってくれた。

「あさひちゃん、お昼ご飯一緒に食べよ!」
「うん!」

 前の学校は給食だったけれど、この日輪中学校はお弁当なんだ。
 一人で食べるようなことにならなくてよかった、と笑顔でうなずくと、次の瞬間周りがざわめく。

「え!? 陽木さん、望さんと一緒にお昼食べるの!?」
「ってことは月島の兄たちと一緒に!? うらやましい!」

 なにごと!? って驚いて周りを見ると、男女問わずクラスメートのほとんどが羨望の眼差しをこちらに向けていた。
 みんなの反応の理由がわからなくて戸惑う。でもそんな私の腕を望ちゃんは強めに引っ張っていく。

「あさひちゃん、行こう!」

 教室から出て廊下を進み、人の気配が少なくなったところで望ちゃんは大きなため息をついた。

「はぁ……みんな大げさなんだよ……」
「えっと……どういうこと? なんでクラスのみんな、あんなにさわいでたの?」

 私が聞くと、望ちゃんは困った表情を浮かべつつ歩きながら説明してくれる。

「私、いつも兄さんたちと一緒にお昼食べてるんだ。だからあさひちゃんも一緒に食べるんだろうって予測されたみたい。……あ、もしかして兄さんたちと食べるのは嫌だった?」

 話しながらハッとして聞かれる。