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 学校では職員室まで望ちゃんが案内してくれた。
 一応場所は聞いていたけれど、ちゃんとした場所はわからなかったから助かったよ。
 担任の先生は中島先生っていう中年の女性だった。厳しそうにも見えるけれど、丁寧に学校のことを教えてくれてしっかりしてる人なんだなって思った。
 持ってきた竹刀も、授業中は別の場所にしまっておくようにって言われただけで叱られたりはしなかったし。
 今のところは何とかやって行けそうって思えてホッとした。
 望ちゃんと同じクラスだって事前にわかっていたのも安心材料だったのかも。

「じゃあ、行きましょうか」

 中島先生にうながされ、二人で教室に向かった。
 1-Bの教室へ先に入った中島先生。しばらくしてから「陽木あさひさん」と呼ばれる。
 緊張しながらも教室に入って、前に立つ。
 中島先生が私の名前を大きく黒板に書いているうちに教室内を見回して、望ちゃんの姿を見つけた。
 目が合うと望ちゃんは軽く手を振ってくれて緊張が少しゆるんだ。

「陽木さん、自己紹介してちょうだい」

 中島先生にうながされ、私は息を吸い込み意を決して話す。

「陽木あさひです。得意教科は体育と家庭科で、カワイイものが好きです!」

 最後の一言はものすごく緊張した。
 今までカッコイイ印象ばかり持たれていたから、カワイイものが好きなんて言葉にすらできなかったし。
 でも、クラスメートの反応は特になくて、似合わないと思っているような人はいないみたいだった。
 剣道をしていたことを知っているはずの望ちゃんも、変な顔をすることなく笑顔で私を見てる。
 よかった、と肩の力を抜いた私は、中島先生にうながされて望ちゃんの隣の空いている席に座った。