「昨日見ただけじゃあ俺の強さがわからなかったってことだよな?」
「え? あの……」
「じゃあ、もう一回見せてやるから今日の放課後には武道場に来いよ」
「へ? 武道場? ……っていうか、近いんですけど!?」

 近くに来られたまでは良かったんだけど、朔さんはそこからさらにグッと近づいてくる。
 整った顔に見下ろされて、なんだか変にドキドキしてしまった。

「本当、近いよ! もうちょっと離れて朔兄さん!」

 望ちゃんも助け船を出してくれて、朔さんは「そうか?」といつもの無表情に戻って離れてくれた。

「もう! 朔兄さんがこういうコトするとは思わなかったからビックリしたよ。晦兄さんじゃあるまいし」

 望ちゃんは私の腕にひっついて、プンプン怒っている。
 朔さんは言われて初めて気づいたみたいに目を丸くしてキョトンとした顔をする。
 その表情がかわいく見えて、不覚にもキュンとした。

「そうか……そうだな。なんでだろ? あさひ相手だと近づきたくなる」
「なにそれ?」

 わけがわからない、と眉を寄せて首を傾げる望ちゃんもかわいい。でも、いつまでもここで話してるわけにもいかない。

「えっと、とりあえず学校向かわない?」

 苦笑気味に、私は二人をうながした。