そう、私は格好良くなりたいわけじゃない。
 剣道も好きだけれど、カワイイものも好きなの!
 前の学校では剣道をしている姿が格好良いって言われてファンまで出来ちゃって……。
 ハッキリ言われたわけじゃないけれど、カワイイものなんて似合わないとばかりにみんな凛としたクールなイメージを私に当てはめてきた。
 慕ってくれている子たちの表情を曇らせたくなくて、私も強く否定出来なかったし……。
 悲しさに気持ちが沈んできたのを感じてハッとした私は、ポニーテールの黒髪を大きく揺らすように頭を振って切り替える。

「ダメダメ! 明るく可愛く!」

 手紙をくれた子たちには悪いけれど、せっかく今までの私を知る人がいないこの日輪街(ひわまち)に来れたんだもん。自信を持ってカワイイものが好きって言えるような女の子になるんだ!
 そのためにこの新しい土地では、剣道をしないって決めたんだから。

「さ! 気分を変えるためにもコンビニにアイスでも買いに行こうかな? 切手も買わなきゃいけないしね」

 両手のひらをパンッと叩いて切り替える。
 財布の入ったネコ柄のミニショルダーバッグに、スマホも入れて肩に引っかけた私は、お母さんにコンビニに行ってくるとだけ伝えて玄関を出た。